失敗を誇りにする精神力、継続することの尊さ。野球界にもはびこるデータ化への警鐘。21世紀前半の19年間を変化の中で突き抜けた男の軌跡。
ISBN:978-4-532-17687-7
並製/四六判/204ページ
おすすめのポイント
●引退から1年、選手時代と変わらない姿勢
2019年3月21日、東京ドーム。引退会見に臨んだイチローの会見は深夜90分にも及んだ。貫いたものは、「野球を愛し続けたこと――」。選手を引退した現在もシアトルでトレーニングを続け、ボールを追い続ける姿勢は変わらない。
シアトルで始まったメジャーリーグでの選手生活は19年に及んだ。最初は「ヒットを打てるんですか」?という侮辱から始まったが、「なぜ打てないの」?に質問は変わった。ヒットを打ち続けるイチローを横目に、チームは低迷を続けた。その間、チーム内の「いじめ」もあり、イチローは感情を隠し、信じるものを貫いた。人がいて、組織があり、結果や記録があるのは、どの世界も変わらない。本書では、野球の話題にとどまらず、一般ビジネスパーソンにとってヒントになるイチローの生き様を切り取っていく。
データの分析を重視する風潮が、メジャーリーグに蔓延してきていて、それにあらがうイチローの姿勢も面白い。メジャーリーグでは、球場の様々なところにカメラをつけて、ボールの回転数や打球スピード・角度、守備で打球が捕れる確率などを計算し、野球経験のない球団トップが選手起用に口を出す傾向が顕著になっている。これをイチローは「頭を使わない野球だ」と諫めるが、これは、ビジネス界でも過去の販売データなどに寄り添い、融資などもスコア化する風潮と似ていると著者は言う。データで見えないところにチャンスがあると、イチローは語る。
本書は、日経電子版に連載された「イチローフィールド」をベースに、構成を見直し一冊にまとめたものです。シアトル在住の著者は、マリナーズ入団時からイチローの取材を続けており、当時の取材メモから引退後の取材も含めて書籍化しました。イチローに長期にわたり密着した内容であり、チーム関係者やチームメートの証言を入れていることも本書の魅力です。
目次
- プロローグ--3・21ドキュメント
第1章 イチローを突き動かした原動力
第2章 失敗こそが誇り
第3章 貫いたもの、貫けたもの
第4章 イチローが背負ってきたもの
第5章 記録とは。そこにあるイチローの世界観
第6章 「頭を使わない」野球とは
第7章 子どもたちに伝えたいこと
第8章 イチローからのギフト
著者・監修者プロフィール
米在住スポーツライター
1967年、愛知県生まれ。
立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米し、インディアナ州立大学スポーツマーケティング学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、スポーツナビなどコラムや記事の配信を行っているほか、NHK BS-1で放送されている「MLB」にも協力。
※本データは、小社での最新刊発行当時に掲載されていたものです。