全上場企業のデータを基に株式持合いの効果を定量分析。取引関係の維持・強化といった利点が失われていることを明らかにする。

政策保有株式の実証分析
失われる株式持合いの経済的効果

定価:本体5,000円+税
発売日:2020年06月23日
ISBN:978-4-532-13505-8
上製/A5判/288ページ
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おすすめのポイント

政策保有株式(株式持合い)は多く持つほど利益率が低く、取引関係の維持・強化にはつながらない
全上場企業のデータから、会計数値の変化を検証

買収防衛、高株価維持、取引先との関係強化など様々な目的で導入され、“根雪"のように残る政策保有株式(株式持合い)。全上場企業のデータを基に、その効果を定量分析。その経済的効果がもはや失われていることを明らかにする。

目次

  1. 序章 本書の問題意識と用語の定義
    1. 株式持合い研究の盲点
    2. 本書の分析視点と結論
    3. 本書の構成と用語
    (1)本書の構成
    (2)「株式持合い」の定義
    (3)日本企業の株式持合いの実際
    (4)持合い株式と政策保有株式
    (5)本書で用いている財務データベース

    第I部 政策保有株式(株式持合い)の成立

    第1章 株式の集中化とその漂流──戦前~1950年代
    1. 第二次世界大戦前の株式分布の特徴
    (1)第一次世界大戦直後の株主構成
    (2)重化学工業化の進展
    (3)株式は集中化したのか
    2. 終戦時の財閥の株式保有状況
    3. 個別融資関係の形成
    4. 財閥本社の解体と株式の放出
    (1)持株会社整理委員会の設立(1946年4月)
    (2)財産税法 ―財閥家族の解体―(1946年11月)
    (3)会社の証券保有制限等に関する勅令 ―独占的大企業の解体―(1946年11月)
    (4)独占禁止法の制定(1947年4月)
    5. 放出された株式の処分
    6. 若手経営者の登場と株式安定化の必要性
    7. 証券取引所の再開

    第2章 株式持合いの本格化
    1. 企業再建整備増資の活発化
    2. 事業会社の株式取得解禁(1949年6月独占禁止法改正)
    3. 旧財閥系企業の再集結──三菱商事の事例
    4. 株価の低迷と株式買占めの脅威
    5. 独占禁止法のさらなる改正(1953年9月改正)
    6. 株主の法人化の進展
    7. 有価証券の開示制度の整備
    8. 経営者の地位安定化(1950年5月商法改正)

    第3章 企業集団の形成と株式持合い
    1. 六大企業集団の株式持合い比率
    2. 社長会の結成
    (1)旧財閥系社長会―三菱・三井・住友―
    (2)系列融資と銀行系企業集団
    (3)企業集団と企業系列
    3. 高度経済成長と40年証券不況
    4. 日本共同証券・日本証券保有組合の設立
    5. OECD加盟と株式持合いの完成
    (1)資本自由化と株式安定化の強化
    (2)株式持合いの形状
    (3)企業集団間の株式持合い
    6. 時価発行増資と高株価経営のはじまり
    7. 1960~70年代の制度改正
    (1)大規模会社の株式取得制限(1977年6月)
    (2)子会社、関連会社、関係会社の定義

    第4章 株式持合いの変質とバブル崩壊
    1. 買占め防止から高株価維持へ
    2. バブル経済と株式持合い
    (1)財テクとエクイティ・ファイナンス
    (2)金融機関による株式取得
    3. 銀行が事業会社株式を保有する動機
    4. 事業会社が銀行株式を保有する動機
    5. バブル崩壊と銀行の株式売却
    (1)バーゼル規制と株式持合い
    (2)銀行株式保有制限法の制定
    (3)公的資金による銀行保有株式の買取り
    6. 事業会社による銀行株式の選択
    7. 商法の改正
    (1)親会社株式取得禁止と25%超保有企業の議決権停止
    (2)自己株式取得規制の緩和
    8. 純粋持株会社の解禁 ─独占禁止法の改正─
    9. 金融商品への時価評価の導入
    (1)「金融商品に係る会計基準」の導入
    (2)有価証券の分類と表示
    (3)クロス取引による益出しの禁止
    (4)開示項目の改変

    第5章 コーポレート・ガバナンスと政策保有株式の時代
    1. それでも続く株式持合い
    2. 政策保有株式の開示
    (1)開示制度の概要
    (2)政策保有株式と有価証券明細表の記載内容
    (3)政策保有株式の開示強化(2019年3月期)
    3. 有価証券明細表の開示の任意化
    4. コーポレートガバナンス・コードの導入と改訂

    第II部 政策保有株式の経済効果の実証分析

    第6章 株式持合いの効果と経済的影響──先行研究のレビュー
    1. 2つの空洞化
    (1)資本の空洞化―紙のやりとり・花見酒の経済―
    (2)会社支配の空洞化
    2. 財務の視点からの分析的研究
    3. 株価形成は実際に歪んでいるのか
    (1)理論と実際
    (2)実証研究とアンケート調査
    4. 株式持合いの効果 ―事業会社にとって―
    (1)リスク軽減―取引関係の協調化・長期安定化―
    (2)相互監視
    (3)情報の非対称性の緩和
    (4)相互補助―リスク・シェアリング―
    (5)資金調達の安定化
    (6)株式市場からの圧力の軽減
    (7)その他の効果
    (8)株式持合いのマイナスの効果
    5. 企業集団の財務特性に関する実証研究
    (1)企業集団と相互保険システム説
    (2)企業集団の効果の変化
    6. 株式売却に関する実証研究
    (1)投資主体別の株式投資行動
    (2)銀行が売却した株式の特徴
    (3)外国人投資家の影響
    (4)事業会社・銀行の協調的売却
    (5)有価証券時価評価と株式売却行動

    第7章 実証分析で用いるデータの特徴
    1. 使用できる株式データの種類と特徴
    (1)有価証券勘定・投資有価証券勘定
    (2)有価証券明細表
    (3)政策保有株式
    (4)その他有価証券
    2. データ間の相違
    3. 長期の株式保有動向
    4. インサイダー・アウトサイダー比率の長期動向
    5. 政策保有株式の保有状況と保有理由(2018年度)
    (1)政策保有株式の保有状況
    (2)政策保有株式の保有理由

    第8章 政策保有株式と会計数値の関係
    1. 本研究の目的と先行研究
    2. 検証課題の構築
    3. リサーチデザインとサンプル
    4. ポートフォリオの組成
    (1)利益率の検証でのポートフォリオ組成
    (2)安定性、成長性の検証でのポートフォリオ組成
    5. デフレーターと業種調整の方法
    (1)利益率の計測
    (2)利益率の安定性の計測
    (3)売上高・総資産の年平均成長率の計測
    6. 利益率との関係の検証結果
    (1)前期末総資産デフレートの結果
    (2)30パターンの検証結果
    (3)ポートフォリオ間の差異の検定
    (4)追加分析
    (5)小括
    7. 利益率の安定性との関係の検証結果
    (1)前期末総資産デフレートの結果
    (2)30パターンの検証結果
    (3)ポートフォリオ間の差異の検定
    (4)追加分析
    (5)小括
    8. 成長性との関係の検証結果
    (1)検証結果
    (2)追加分析
    (3)小括
    9. 結果の総括と残された課題

    第9章 株式売却前後の会計数値の比較
    1. 本研究の目的
    2. リサーチデザインとサンプル
    (1)リサーチデザイン
    (2)サンプル
    (3)売却の判断基準
    3. 比較する会計数値
    (1)利益率
    (2)利益率の安定性
    (3)売上高・総資産の成長性
    4. 検証結果
    (1)利益率の変化の検証結果
    (2)安定性の変化の検証結果
    (3)成長性の変化の検証結果
    5. 本研究の結論
    (1)結果の解釈
    (2)なぜ利益率が低いのか ─鎧から重しへ─

    第10章 政策保有株式の売却行動の決定要因
    1. 本研究の目的
    2. 先行研究のレビューと仮説の構築
    (1)先行研究のレビュー
    (2)仮説の構築
    3. リサーチデザインとサンプル
    (1)検証モデル
    (2)サンプルと記述統計量
    4. 検証結果
    5. 追加分析
    6. 結果の解釈


    第11章 日本企業の安定株主の実態
    1. 安定株主比率に関するデータ
    (1)安定株主に関する既存データ
    (2)安定株主比率の推移
    2. 実態調査の実施
    (1)調査概要と質問項目
    (2)回答結果
    3. 実態調査結果と各種データとの関係性
    (1)所有者別状況との関係
    (2)株式保有比率との関係
    (3)株主総会議案賛成率との関係

    第12章 議決権の価値算出の一試案
    1. 議決権の価値の定量化
    2. TOBの仕組みと買収プレミアムの概念
    (1)TOB制度の概要
    (2)買収プレミアムの概念図
    3. サンプルとその特徴
    (1)サンプルの抽出
    (2)買収プレミアムの分布
    4. 獲得する支配権と買収プレミアムの関係
    5. 議決権の価値の推計
    6. 本研究からの示唆

    終章 なぜ、持合いを続けるのか ──日本企業への提言──
    1. 本書の発見事項
    (1)株式買占めの脅威への対抗手段
    (2)政策保有株式と会計数値の関係
    (3)株式売却による会計数値の変化
    2. なぜ、持合いを続けるのか
    3. 世界の中の日本
    4. 企業、機関投資家、資本市場への提言
    (1)企業への提言
    (2)機関投資家への提言
    (3)資本市場への提言
    5. 今後の研究展望

著者・監修者プロフィール

円谷 昭一(つむらや しょういち)

一橋大学大学院経営管理研究科准教授
2001年、一橋大学商学部卒業。2006年、一橋大学大学院商学研究科博士後期課程修了、博士(商学)。埼玉大学経済学部専任講師、准教授を経て、2011年より現職。2019年、韓国外国語大学客員教員。日本IR協議会客員研究員(2007年~)。日本IR学会理事。
2013年、経済産業省「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築を考える~」委員、経済産業省「企業会計とディスクロージャーの合理化に向けた調査研究」委員、2017年、りそなアセットマネジメント「責任投資検証会議」メンバー。専門は、ディスクロージャー、IR(Investor Relations)、コーポレート・ガバナンス研究。
著書に『コーポレート・ガバナンス 「本当にそうなのか?」-大量データからみる真実-』(編著、同文舘出版)がある。

※本データは、小社での最新刊発行当時に掲載されていたものです。

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